☆「熱闘Mリーグ」は麻雀界で画期的な放送ださて、Mリーグも開幕してから1週間ちょっとが過ぎたわけですが。
実は自分が個人的に注目していたのは、毎週日曜10時に放送されるというダイジェスト番組「熱闘Mリーグ」でした。
皆さんもご存知の通り、麻雀の対局というのは、リアルで追ってる場合、どうしても理解不能に陥る場面があります。盤面での選手の思考というのは非常に複雑であり、戦略や理論を凝らした一打もあれば、感覚的で丁半バクチな仕掛けなんてものもあったり。
普段それら選手の真意や心理は、対局後に行われる感想戦だったり、牌譜の研究で補われていくのですが、麻雀のメジャー化を目指すMリーグでは、AbemaTVで放送するというメディアミックス戦略がまず前提にあります。これらの対局の詳報が映像として視聴者に提供されることはもはや必然であり、それがいわゆる麻雀版「熱闘甲子園」として放送されることに、大変興味があったわけです。
で、第1回を拝見させてもらったのですが…ひとことで言えば、初心者ファンにはわかりやすく、中・上級者ファンだとニヤリとする、なかなか面白い番組だったと思います。
かつて「THEわれめDEポン」の常連出演者だった爆笑問題の田中さんを筆頭に、麻雀ファンにはおなじみの麻雀好き芸能人たちが、自分たちの知っている麻雀プロについてあれこれ語っていること自体が、非常に新鮮だったというか。
特に、ダイジェストが流れている最中に、スタジオの皆さんが対局の感想を述べているのがいいですね。前原プロの2枚残りのカン二萬リーチに驚嘆の声が挙がったシーンで、初見のファンでも前原プロの名前は記憶へ刻み込まれたと思います。まさに番組の狙い通りの展開だったのではないでしょうか。
また、一週間の対局の中で素晴らしかった一打をピックアップする「じゃいの眼」も、あたかもスポーツニュースで元選手が技術解説をするコーナーのようで、改めてあの六萬を放銃した松本プロの凄みが伝わりました(トータルテンボス大村さんのネタバレが酷かったけどw)。「世間での麻雀プロの評価を上げる」という意味では、番組の軸になり得るコーナーかもしれません。
☆ダイジェストではもっと濃淡をつけた編集を好印象の「熱闘Mリーグ」でしたが、改善点もいくつか。
まず、前半のMリーグハイライト。とにかくアガリの部分だけを流れで見せていたので、ちょっと目まぐるしさを感じましたね。それにプロ同士の麻雀では、アガリだけでなく、仕掛けや手牌進行でもキーになる場面がありますが、そういうシーンはほとんど触れられませんでした。
ダイジェストでは、重要でないアガリのシーンは省略して、もっと肝になる一局についてスポットを当てるべきではないでしょうか。できれば編集で対局のスロー映像や静止画、終了後のコメントもインサートして、何が勝負の分かれ目だったのかを伝えてほしい。
例えば、「プロ野球ニュース」をはじめとする、スポーツニュースのダイジェスト映像では、わざわざ試合の全得点シーンは流しませんし、途中ではキャスターによる解説も入りますよね。我々が当たり前のように見ているテレビのスポーツニュースには、数十年かけて培われた、視聴者の関心を呼ぶ映像手法があります。そこは模倣しつつ、別のところでネットTVならではのオリジナリティを出していけばいいのですよ。
そのためにも、番組にはプロ側の解説者が一人居てもいいんじゃないでしょうか。芸能人たちのトークも面白いのですが、それを解説部分でビシッと締める“重し”がほしいんですよね。できれば現役プロよりも、解説に秀でた実直なコメンテーターがいい。馬場裕一さんや梶本琢程さんみたいなタイプですね。日テレのスポーツニュースでの、江川卓さんの立ち位置というか。
まずは対局のエッセンスをギュッと凝縮することに手間を惜しまず、Mリーグの高度な技術と勝負師の熱量をより濃密に伝えてもらえればと思います。
☆既存のフォーマットにこだわらない番組作りをところでなんですが、先週のMリーグの中継で一度、実験的に麻雀をまったく知らない人に向けての実況をしていましたが、皆さんはどう感じたでしょうか。自分はさすがにちょっと考えすぎだったと思っています。それこそ野球で例えると、「あのバット持ってる人の下に五角形の板が置いてあるでしょ? あの空間にボールが入るとストライクで…」とイチから中継してるようなもの。野球ファンなら、この実況が番組をいかに冗漫にしちゃうかはおわかりですよね。まったく麻雀を知らない人のケアまでしていては、むしろその対局の興味を半減させる可能性まであります。
なぜこんな話を始めたかというと、もちろんMリーグの実況陣をディスりたいわけではありません(むしろ、視聴者へいかにわかりやすく伝えるかを常に考えている姿勢は褒めたいくらい)。この辺のMリーグ関連の番組演出をコントロールしているのは誰なんだろうということです。実況アナや解説者に任せっきりにするのではなく、少し番組の作り方さえ変えて、実況の方向性を定めてあげればいいのに、と。
前回の記事でも書いた通り、今のMリーグ中継にもう一人ゲスト解説を呼べば、実況陣の話がわかりづらい時には、初心者と同じ目線で「それ、どういう意味ですか?」と聞くことができます。画面テロップという視覚情報も重要で、例えば待ち牌について、画面に常に表示しておけば、実況陣が待ち牌に関して何度も繰り返さずに済み、ライトファンにも深く情報を伝えることができるはずです。そのあたりの演出までを統括して判断するプロデューサーは誰なのか?
そもそも、Mリーグ中継は旧来のネット麻雀動画のフォーマットに近い形で放送されていますが、そのフォーマットは、ネット中継では技術的にリアルタイムで提供できない情報は、視聴するマニア層が知識や経験則で補完することによって成立しているものです。ライトファン層に目を向けるのなら、番組フォーマットも変えなければいけません。Mリーグを麻雀界の一大イベントとしてうたうのならば、安易に既存のフォーマットに乗っかるだけではなく、多少の費用はかかっても、視聴者のユーザビリティが高い番組作りをスタッフは率先して目指すべきではないでしょうか。
結局のところ、「熱闘Mリーグ」に関しても、ニュースバラエティのフォーマットを無難に踏襲しているだけの感じがするのです(もちろん、今までこの類の麻雀番組がなかったことを考えればかなり画期的ですし、最初にも触れたとおり、内容も充実していたと思いますが)。
できれば、Mリーグ関連の番組について、AbemaTVの制作スタッフにはもう一歩踏み込んでほしい。視聴者目線で「競技麻雀」というジャンルならではの番組演出を目指し、細かい部分での修正に対応していってほしいのです。そうすることでMリーグ中継も「熱闘Mリーグ」も、ますますエキサイトでエンターテイメントにあふれたコンテンツへと成長し、Mリーグが望む「麻雀のメジャー化」へとつながっていくと思うのです。
(了)
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