お歳も召されていましたし、最近体調が芳しくないお話も聞いていました。
それでも、やっぱり。この時を迎えてしまうのは、非常に悲しくて、つらい。
小島先生のことで、思い出す事をつらつら書いていこうと思うのですが…。
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自分が「近代麻雀」の編集部にバイトで潜り込んだのは1994年のこと。
当時の自分は、「とにかくコミック誌の編集になれるなら何でもいい!」という感じで入社したので、麻雀はそれなりに好きでしたが、業界知識は皆無。麻雀プロの存在自体も知りませんでした。
編集部で働き始めてすぐ、自分が小学生時代に通っていた剣友会(剣道のサークル)の、高倉健と川谷拓三を足して2で割ったような感じなO先生と、道でバッタリ遭遇しました。
O先生「秋くん、今どこで働いてるの?」
自分「コミック誌の『別冊近代麻雀』って編集部で働いてまして…」
O先生「え…、ホントーっ!? いいなぁ! じゃあ、小島武夫プロと一緒に仕事したりするんだ!うらやましいなぁ~、俺ファンなんだよぉぉぉっ!」
顔がみるみる真っ赤になって、興奮しながら話す拓ボン…じゃなかった、O先生。しかし、自分は小島先生の名前を出されても、あまりピンときていませんでした。
そんな出来事があった1,2週間後でしょうか。
第6回最強戦のプロ新人王戦(プロ大会だったかな?)が有楽町の錦江荘で開催され、自分ももちろんスタッフとして働いていました。
4回戦の予選が終わり、ついに決勝。
この大会に優勝すれば、当時ホテルグランドパレスで開催されていた最強戦本大会に参加ができる――そんな決勝進出メンバーの息詰まる闘牌を、ギャラリーも固唾を飲んで見つめておりました。
すると突然、少ししゃがれた博多弁のおじさんの声が。
「おーい、ビール」
あらーっ? ずっこけるギャラリー。
声の方向を見てみると、すでに注文したビールジョッキを片手に、ご機嫌そうに対局を見守る小島先生の姿がw
「まあ、先生なら仕方ないか」
今はこんなことする見学者もおりませんが、当時の小島先生にはそんな行動もみんなで許容できる愛嬌がありました。
無頼で豪放磊落で陽気なキャラクター。魅せる麻雀でギャラリーを魅了――。
麻雀業界における小島先生の大きな存在感を、無知だった自分もほどなく気づくことになります。
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▲撮影中の小島先生。
勝手に思ってるだけかもしれませんが、小島先生に自分は目をかけられていた気がします。
最強戦の会場などで、本当は自分から挨拶へ行かなきゃいけない時にも、逆に小島先生から「秋くん、秋くん」とニコニコ近づいてきてくれたり…。
編集部から異動してしばらく経った後、ある麻雀大会の会場で小島先生とお会いしました。
小島「おお、秋くん。やせたなぁ。どうした?」
自分「いやぁ、このままだと成人病一直線なんで、ちょっとダイエットを」
小島「ああ、ダイエットかぁ、えらいなぁ(ニッコリ)。もう、秋くんくらいの年齢なら気をつけんとなぁ」
小島先生自身、糖尿病だったこともあるからか、いきなり痩せて現れた自分を見て、どうやら心配してくれたようなのです。
麻雀業界とは直接なんの関係もなくなり、なんとなく会場では(自分で勝手に)疎外感を感じていたりしたのですが、この時の小島先生からの一言で、気分がずいぶん楽になった記憶があります。
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対局も何回かさせてもらったこともあります。
印象のある対局もたくさんあります。
でも、あえて麻雀界自体の偉業に関してはここでは触れません。
それよりも、自分にとって小島武夫さんは、本当に「おじいちゃん」みたいな存在でした。
いつも笑顔で、お酒が好きで、酔って若い頃の武勇伝を軽妙にお話されている姿がとってもチャーミングで――。
自分よりも年下の人間だと、「麻雀界のスーパースター」という事実よりも、そんな身近な「好々爺」としてのイメージが大きかったんじゃないかなぁ、と思うのです。
今回、小島さんが亡くなって、麻雀プロの皆さんの追悼ブログを読むと、その内容の多くが「相談に乗ってもらった」とか、「一緒にお酒を飲んだ」というものばかりでした。小島さんの人情家で世話焼きの人柄を示すエピソードと言えると思います。
ある時期から、小島武夫プロは、麻雀界全体を優しく見守るおじいちゃんになっていたのでしょう。
だからこそ――「ミスター麻雀」なんだろうな、と。
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これから小島先生は、雀荘や居酒屋ではなく、天国から麻雀界を見守ることになりました。
きっと今ごろ、自分が錦江荘で初めてお見かけしたあの時のように、片手にビールジョッキを持ちながら、陽気に下界を眺めているのでしょう(もしかしたら、もう天国で愛人も作っていたりしてw)。
今までありがとうございました。
小島武夫さんのご冥福をお祈りいたします。
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実は以前、小島先生が「11PM」に初出演された際の読み切り漫画を担当した際、馬場さんと一緒に渋谷で取材させてもらったことがあります。いきさつが面白かったので、稿を改めて、またそのお話を書こうと思います。
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