五輪競技を目指すとして、川渕三郎氏の最高顧問就任、全国スポーツ紙の広告ジャックが話題を呼ぶなど、Abema TVの藤田晋社長がチェアマンとなり、昨年10月から麻雀界史上最大のスケールで繰り広げられた競技麻雀チーム対抗リーグ戦「Mリーグ」も、3月31日に園田賢プロ、村上淳プロ、鈴木たろうプロが所属する赤坂ドリブンズの圧倒的優勝で幕を閉じました。
自分は開幕前や開幕直後に意見を書かせてもらいましたが、このままリーグ終了後に何も触れないのも「あいつ、開幕時にはあれだけ言ってたのに、実はケチつけたいだけで見てなかったんじゃないの?」とか言われそうなんで、また少しあーだこーだと書かせてもらいます。関係者には耳が痛い話も多いと思いますが、そこは覚悟してお読みくださいw
「麻雀プロ」の地位向上が一番の功績結局、第1期のMリーグが一通り終了して、一番目立った功績はなんだったか?
自分は、「Mリーガーとなった21人の麻雀プロの、技術と個性が世間に大きく発信できたこと」だったんじゃないかと思います。
最近でも、CS放送やネット配信の対局には多くのプロが登場していますが、麻雀好きのライトユーザーにまではなかなか届きづらい実態があります。
しかし、今回のMリーグ中継を通して、麻雀プロの卓越したテクニックやユニークなキャラクター、何よりも麻雀に対する熱意が、多くの視聴者には伝わったのではないでしょうか。
自分は編集者時代、取材で麻雀プロの対局を数多く見てきました。その頃といえば、麻雀と真摯に向かうプロの姿勢も、限られたメディアではなかなか伝わらず、失着打を放ったプロに対しては、人格攻撃にも近い酷い批判がネット界隈には多く飛び交っていた気がします。
しかし、このMリーグでは逆に、負けた選手に対しては、非難よりも、リベンジ期待の温かいエールが数多く送られていました。これはジャンルとしても大きく発展した部分であり、その成熟にMリーグが寄与したという証ではないでしょうか。
毎週日曜22時に放送されていたダイジェスト番組「熱闘!Mリーグ」が果たした貢献も大きいでしょう。この番組のよさに関しては以前も触れたのでここでは割愛しますが、各Mリーガーの密着ドキュメント、じゃいの眼、Mリーガーをリスペクトして番組に迎え入れてくれた芸能人キャストの働きが、世間での彼らの見方を大きく変えてくれました。
第2期からは、チームあたりの構成選手数が増えることや、チーム数自体の増加も予定されていると聞いています。
個人的には、第1期で大敗したチームは、大幅なメンバー変更をして、より多くの麻雀プロから「Mリーガー」を輩出して欲しい。第1期で選ばれた21名以外の麻雀プロにも、実力者は大勢います。今回のMリーグ開幕まで無名だった園田賢選手の大活躍が、そのことを証明していますよね。
また、Mリーガー経験者を多く作ることが、麻雀界全体の底上げにもなります。逆にここで下位チームにメンバー刷新がないようであれば、「ナアナアなお友達チーム編成」のそしりも免れないでしょう。
今年の第2回ドラフトは、第1回以上に注目するべきかもしれません。
旧来のタイトル戦に埋没するMリーグさて、開幕前に自分はこんな懸念をブログで書いていました。
「Mリーグ側に多くのリーグが増え、たっぷりとプロ選手が流出することにでもなれば、プロ団体は単なるMリーグへの人材供給基地となり、いわば「ジム」や「道場」としての役割でしか存在できなくなります。Mリーガー以外の麻雀プロが雀荘で働くことも、悪く書けば「ドサ回り」化することになるでしょう。現状のシステムで既得権益を握っていたプロ団体と雀荘業界は、抜本的な構造改革が余儀なくされるのです」この件に関しては、とりあえず杞憂に終わったような気がします。どちらかというと、悪い意味で、ですが。
自分は、この「Mリーグ」というものが、小さい利益を巡って離合集散を繰り返すプロ麻雀界での「いびつ」に作られた序列を完全に破壊して、Mリーグでの格付けがそのままプロ麻雀界のランキングとして世間に浸透していく未来を予想していました。
ところが、率直に言ってしまえば、新聞やテレビでの広告展開以外で、Mリーグの目新しい取り組みは見えませんでした。従来の競技麻雀界でのスキームの中で、Mリーグは数多あるタイトル戦のひとつとして埋没してしまっているのです。
何度も指摘してますが、普段の対局時での「話題作り」に乏しかったのが最大の理由です。対局時の画面デザインが従来のフォーマットと変化がなく、実況・解説陣が業界内の人間ばかりという「守り」の姿勢からは、従来のファン以外を取り込んで麻雀界の裾野を広げていこうという気概が見えません。
なんでもいいんです。例えばプロ野球であれば、毎試合のように始球式でスポンサーやタレントを呼び、始球式を行っています。テレビでも、他業種のアスリートや芸能人がゲストとして解説をしています。Jリーグでも、有名アーティストによる国歌斉唱だったり、スポンサーによるイベントが催されています。それはファンサービスと同時に、話題性を狙って、メディアから注目されることに尽力しているからです。
そのまま取り入れてしまうと珍妙にもなりかねませんが(最初の一打だけゲスト芸能人が打つ「始打式」?w)、他ジャンルの取り組みから、Mリーグに生かせる知恵がいくつも出てくるはずです。
無理を承知で言いますが、そのスケールから考えれば、Mリーグは地上波やCS放送、動画配信にはなかった画期的な麻雀中継を生み出すのは義務と言ってもよく、それがスタンダードになるような流れを作ってもらわなければ困るのです。予算面やゲストのスケジュール確保など、クリアすべき問題も多いと思いますが、これはぜひとも見直してもらいたいと思います。
運営側はもっと麻雀界の未来を担うべく努力を対局運営における不備も散見しました。例えば、チョンボが発生した際に対局がストップし、選手や運営がまごついている様子は、見ている側としてはあまり気持ちのいいものではありませんでした。裁定が長時間に及ぶのは運営自らでスムーズな対局進行を阻害していると言ってよく、常駐している審判員のレベルも問われます。せめて、そういったチョンボなどの局面ではすぐにCMをインサートして、選手間や審判員が裁定を熟慮するための時間を設けるべきでしょう。
また、今回のMリーグでは、インフルエンザのまま対局に臨む選手がいて、その結果、対局していた複数の他選手が感染してしまったのでは?という、ありえない事例も発生しました。対局前の時点で、チーム内や運営側では気づかなかったのでしょうか。
Mリーグは冬のさなかでの開催ということもあり、これからも対局前の選手に、インフルエンザやノロウイルスなどの感染症が疑われるケースが起こるでしょう。その際には、運営側で強権を発動し、交代の勧告はもちろん、参加を強行した選手へのペナルティや出場停止処分、対局のサスペンデット(他チームとの対局の前倒しかエキシビジョン対局で対応)も検討するべきです。
「五輪競技を目指す」というお題目がある以上、前時代的な運営は徹底的に排除しなければなりません。第2期でも思いもよらぬ事態が発生するかもしれませんが、そのまま放置するのではなく、可及的速やかに是正できるよう運営側は努力して欲しいところです。
「ライブビューイング」がさらなる発展を遂げるために最後に、Mリーグが麻雀界の風景を変えた挑戦のひとつに「ライブビューイング」の開催があります。バレーなどで見るバルーンを使った応援には、従来のファンの中で賛否両論があると思いますが、そこについては触れません(プロ野球の外野席と内野席のように、静かに観戦もできる棲み分けを実施してほしい気もしますが)。
ただ、Mリーグの開始時刻が19時で、選手紹介などのコメントをたっぷりと行うことで対局の開始がさらにが遅くなり、ライブビューイングの終了時間が0時近くになっていたことが多々あったと記憶しています。これは、観客を迎え入れる競技としてはちょっと問題です。多くの若年層ファンをつかみたいと思うのなら、終電を気にせずに帰宅できるような、22時前でのイベント終了を目標とすべきです。
そのためには、平日は対局を1回にして、その分、土日祝日で複数の対局を行うとか、時間打ち切りや親連荘の縛り(アガリ流局や連荘回数の制限実施)、コールドゲーム(6万点以上時点でのゲーム終了)のシステムなどを導入して、対局時間が短くなるように検討していくべきでしょう。1半荘で対局時間が2時間以上になると、視聴する側にも我慢が強いられます。ここはプレイヤー側の意見よりも、ファン側の視点によるルール作りが求められていると思うのですが、どうでしょうか。
また、ライブビューイングという新たな観戦スタイルをMリーグが提供する一方で、AbemaTVという日本全国で無料で視聴できる環境があるにもかかわらず、地方でのMリーグの反響がそこまで伸びているようには見えません。
そこで第2期からは、地方都市でのライブビューイング開催も検討するといいのではないでしょうか。対局自体は東京でやっているにしても、対局に絡んでいない新旧Mリーガーを何人かゲストとして招聘して、終了後にファンミーティングを行うのです。可能であればMリーグの対局自体も年に1,2回ほど地方で行い、ファンイベントを開催する。
ちなみにMONDO TVでは、J:COMなど地元ケーブルテレビの協賛を得て、地方での麻雀大会を開催しており、大変盛況だと聞いています。また、片山まさゆきさんと馬場裕一さんが主宰によるアマチュアリーグ戦・GPC(グッドプレイヤーズクラブ)は、開始後、徐々に地方へと波及し、規模の大きさに差はありますが、今では全国11か所でリーグ戦が展開されています。プロ野球やJリーグでもわかる通り、ブームを起こすのに地方の力は重要なのです。
理想を言えば、第2期から増えると言われているチームに、地方をフランチャイズにした企業チームが参入してくることを期待したいですね。その企業チームを中心に、地方でMリーグが広がりを見せれば、「ギャンブルではない麻雀の普及」にも現実味が帯びてくるのではないでしょうか。
Mリーグの今後については業界全体で議論すべき以上、第1期Mリーグが終了して、気になる部分を列挙していきました。
不思議なのは、Mリーグが終了してもう何週間にもなるのに、対局に関しての意見はあっても、Mリーグの運営を総括するような意見がほとんど聞かれないことです。
第1期ともなれば、いろんなことで是々非々な意見が集まって当然なのですが、それがあまり見受けられないのは、安心して見られているということなのか、いまだに開幕の「ご祝儀」ムードが続いていて、意見を言うのが憚られているのか、それとも、結局また今までのタイトル戦と一緒かと呆れられているのか…。
業界を変革し、麻雀を優良コンテンツへと発展させて、麻雀の競技人口を広げること。それがMリーグの絶対目的であるならば、業界内外でもっとその在り方について、自由闊達な意見が討論されていくべきだと思うのです。
第2期が始まるまであと数ヶ月? 変な言い方ですが、もっとビジネスとしてきちんと成立できる様に、シビアな目でこのMリーグというコンテンツを検証していくべきではないでしょうか。
藤田社長も述懐しているように、AbemaTVの周辺環境も安泰とは言えません。私財を投じてMリーグの発展に尽力する藤田社長の恩義にも報いられる様、Mリーグのアップデートを業界全体でバックアップしていかなければならないのです。
遡ること20年近く前になるでしょうか。
競馬帰りにいつものように大学時代からの悪友・鯖鯉と飲んでるときに、麻雀漫画の話題になりました。
自分は当時、『近代麻雀オリジナル』の編集でしたが、『近代麻雀』読者としてのキャリアは、鯖鯉の方が全然古い。てか、編集部に入るまで自分は『近代麻雀』というコミック誌についてほとんど知らないw
そんな有様から編集部で仕事を始めたので、『近代麻雀』読者の好みが掴みきれない部分もある。
で、酒呑みがてら、リサーチを兼ねてそんな話を振ってみたわけですが。
鯖鯉「というかさー、麻雀コミック誌なのに、作品の中でたまにたいして麻雀を打ってない時があるやん?」
かっぱがれ「まあ、そういうこともあるわな。作品の展開上、闘牌メインにならないことはある…」
鯖鯉「いやいや、みんな普段麻雀をやりたくてもできない人が、『近代麻雀』を読んでウサを晴らしてるわけじゃん? なのに、作品で麻雀してないってなによ?
麻雀コミック誌は麻雀やれ!」
ガーン。
いや、仰せごもっともなわけなんですが^^;
実は当時、今回の質問と似たようなアンケートを懸賞の際にすると、必ず1位は
「もっと闘牌シーンが読みたい」だったんですよ。
たまにエロシーンの多い作品とか掲載すると、
「エッチするヒマがあったら麻雀せんかい」ってクレームがきたりとかw
いや、ホントなんですよ。麻雀マンガの読者って、驚くほど麻雀に対してストイックなんです(今でも『近代麻雀』のアイドルグラビアに不満を述べる読者とかも散見しますし^^;)。
ただ、作ってる側の立場からすると、連載している麻雀マンガでみっちり闘牌シーンを見せる場合は、やっぱりキャラや設定をしっかり立てないといけないので、闘牌少なめな「仕込み」回が事前にどうしても必要になってくる。
少なくても当時の編集部の会議では、その辺のだいたいの「闘牌の分量」を各作品の担当編集が報告し合って、状況によっては雑誌全体での闘牌の量を調整していたりしたのですが…まあ、読者の皆さんはそんなことまで気にしていないですよね。
しかし、ですよ。当時はモンドTVなど麻雀専門のCS放送もなく、通信で他人と麻雀ができる「天鳳」や「麻雀格闘倶楽部」、「MJ」もありません。
映像で見るとしたら不定期放送の「THEわれめDEポン」くらいだし、ゲームも通信ではなくAIとの対戦。セットやフリー雀荘へ行くくらいでしか「リアル闘牌」に触れる機会がなかったわけです。
ところが最近といえば、Mリーグをはじめ、TV、ネット配信、ゲーセン、ノーレート雀荘…いたるところで「リアル闘牌」が花ざかり。麻雀の確率論もかなり細かいところまで論じられるようになって、頭がグチャグチャになってきたりw
そんな今みたいな時代では、世間で「麻雀マンガ」に求めているものも、ずいぶん変わってきてるんじゃないかなぁ…なんて思ったりしまして。
そこで、今回のTwitter上でのアンケートですよ。
改めて結果をドン。
Q.あなたが麻雀マンガに求める一番の要素ってなんですか?ストーリー:35%
登場キャラクター:24%
闘牌シーン:33%
その他:8%
なるほどなぁ。
相変わらず「闘牌シーン」という方も多いけれど、ギリギリ「ストーリー」が過半数という結果に。
「闘牌ももちろん必要だけど、しっかりしたストーリーのドラマを読みたい」…と読者の皆さんは思っていると、自分は感じました。
いかがですかね、この分析?w
やはり、以前よりも読者からは闘牌に関してのこだわりが少なくなった気がしますね。
もしくは、「闘牌=ストーリー」と思っていた方が、「そういうわけでもない?」と思い始めたのか。
ライフスタイル自体、マンガとの関わり方が変化した部分も考慮すべきなのか…。
まあ、これ以上の分析はやめておきましょう。
皆さんはどう感じました?
* * * * * * * *
で、これも私見なのですが。
作り手として大事なのは、圧倒的に2番の「キャラクター」だと思ってるんですよ。闘牌というのは、難解であればあるほど、ただのパズルになります。極論を言えば、闘牌だけで成立する麻雀ドラマはこの世には存在しない。
マンガ作品で例えると自分の場合カドが立つ(w)ので、実在のプロで例えますが、同じペン3ソーのリーチでも、二階堂亜樹プロ、前原雄大プロ、朝倉康心プロと、そのリーチをした選手によってイメージが変わってきます。際立った個性を持ったキャラがあってこそ、闘牌は何倍も面白くなるのです。
また、これは麻雀マンガに限った話ではないですが、目立つ主人公がいればいるほど、読み手にも認知されやすくなりますからね。売れるマンガの絶対条件というか。強烈なキャラクターがいれば、細かい設定がなくてもストーリーは動き出したりするんですよね。
もちろん、ストーリー軽視、闘牌シーン軽視ってわけじゃないですよ! そういう極論ではなくてね^^;
作品の作り方なんて千差万別ですし、入口も自由。結局、キャラを作ったとしても、あとからストーリーや闘牌作りが重要になってくるわけですから。逆に言えば、ストーリーを最初に思いついたら、それに最適なキャラや闘牌を作らないといけない。ホントはみんな大切なんですよ。(←おいw)
まあ、今自分が読んでいる麻雀マンガの作り手にどんなこだわりがあるか…?とか想像するだけで、普段よりも濃い楽しみ方ができるかもしれませんよ。冒頭に書いた通り、まったく麻雀マンガについて考えたことなどなかった自分が、すでに編集部から離れている今でも、これだけ考えちゃったりするわけですから。
…などと、通り一辺倒な締めで大変申し訳ないですがw
アンケートにご協力いただきました皆様、ありがとうございました!
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